ダノンデサイル。
AJCC(1着)以来、2回目の購入となる予定。
エピファネイア産駒の、牡馬。
良駒だ。
今年は3歳馬が話題だが、3馬が来るには「4歳がダメな年」であることが多い。ダノンデサイルは3歳の頃から、失敗騎乗の菊花賞を含め、王道路路線から逃げずに海外遠征に挑んできた。
ドバイシーマクラシックでは、レベルスロマンスとカランダガンと体を並べずに勝つ「圧勝」に近い姿。このパフォーマンスを高く評価する。イギリスの競馬は厳しいだろうと思って見ていた。欧州の芝で”良い仕事が出来るタイプ”には見えなかったからだ。
尻尾を振り回したり個性的な面はあるが、エピファネイアというよりロベルト系特有の”荒々しさ”のひとつだと解釈する。むしろ。
【その荒々しさが、なくなる方が恐い。】
そう、今回の課題は「エピファタイマー」(エピファネイア産駒が、突然心身共に電池が切れたようになり走らなくなる現象。これに尽きる。
もうおそらく、世の中も警戒し始めているだろうと思う。エピファネイアの「萎み」は突然くると。「一度の大敗」でもう元に戻らないと。今回はその「大敗明け」ではある。ただ、イギリスではそもそも噛み合わない、勝てないだろうと思っていたので、そこは気にならない。
4歳の秋になるが、どうか。ポイントはここだ。4歳の秋というのは通常であれば「最高の時節」なのだが、ことがエピファネイア産駒となると「そろそろまずいんじゃないか」という時節だ。
エフフォーリア。サークルオブライフ。ステレンボッシュ。ここ数年で、ある日突然「誰ですか」というほど弱くなるエピファネイア産駒をたくさん見てきただけに。
【今まで、王道型・エピファネイア産駒のエピファタイマーは、4歳春〜4歳秋に「発揮される」(発動してしまう)ことが多かった。】
しかし。
ダノンデサイル。ビザンチンドリーム。
【この世代あたりから、「そうと決まっているわけではない」という感じにはなっている。ビザンチンドリームは夏場〜秋口にかけても欧州のフォア賞で強い姿を見せた。】
エピファタイマーについては、いつ暴発するかわからない恐いさが常にある。ダノンデサイルにとって今回がその時かもしれない。その点が不安だが、むしろ不安は、そこのみ。総合的に「4歳春も強かった、4歳ダービー馬の底力」は有利に感じる。
エビデンス・過去の似ている事例としては、イギリス帰りのジャパンカップで昨年単複を買って7番人気・2着だったドゥレッツァ。それから「4歳ダービー馬」という点を重視してジャパンカップで単複を買ったワグネリアン(3着)。近年だとシャフリヤール(2着)あたりに似ている様に思う。
鞍上は、戸崎騎手。
関東圏では、一定の信頼はおける。だが、戸崎より格上のスーパースターと言えるジョッキーが世界中からやってくるのがジャパンカップの特徴でもある。気合いを入れて乗らないと、通用しない。
東京は先週から、より一層「前が止まらない」。そこを念頭に置いてもらいたい。切れ味というより、パワフルに伸びる馬。今の馬場なら5〜6番手は確保してもらいたい。その位置で我慢し、ガッチリと戦わせる競馬をしてもらいたい。
G1だ。
有力各馬に、ひと言ずつ、見解をつけていこう。
アドマイヤテラ。
堅実な馬。舞台は悪くない。前々で運べれば。ただ、この強烈なメンバーでは3着以内まで来るのは大変そうだ。
カランダガン。
欧州年度代表馬。ガリレオ系、グレンイーグルの産駒。日本の芝には重すぎると思う。セン馬だが、4歳馬でキングジョージを含めて3連勝している「絶頂期」という点には注目できるが。
欧州は3歳シーズンの方が強い馬もいるが、先入観なしで見れば、今年2回目の凱旋門賞で着順を上げてきたソジー(4着→3着)、4歳で本格化して凱旋門賞を勝ったブルーストッキング、少し前だとソットサス、こういった『日本と同じく4歳で完成される馬』も一定数ちゃんといる。そういった意味では、この馬もカテゴリーとして彼らに近い。最高の時節に来日した。
ポイントは、鞍上。ミカエル・バルザローナで、このバルザローナが初めて短期免許で来日した2013年の時に、私は『かなり追えるが、道中で大味な競馬が多く、他の一流外国人ジョッキーより少し劣る』と評価。
2012年にゴドルフィンが、長年続いたデットーリとの専属契約を打ち切り、若返りのような意味合いか、新たに主戦に指名されたのが若き日のバルザローナだった。その際に、デソウサというブラジル人ジョッキーがいてこちらがセカンドジョッキーの様な役回りに見えた。
ただ、ドバイミーティングでは、モンテロッソでドバイワールドCを勝ったバルザローナの騎乗ぶりより、このデソウサの「位置取りを取るまでの速度」「タイトなコーナーリング」「一瞬で馬群を割るセンス」など、道中のキメ細やかさを見て『腕はちらが上』と評価した。
2013年の評価は「その続き」であって、バルザローナは日本でかなり良い”馬質”が用意されていたはずだが、なかなかブレイクはできず、苦労の末、アドマイヤムーン産駒のアルキメデスに乗った2013年・朝日チャレンジCで重賞初制覇となったことを覚えている。
デソウサはその後、2015年、2017年、2018年、イギリスリーディングを獲得。案の定の世界的ブレイク。バルザローナもその後も世界のトップ活躍しているが、今年、集大成のような形で2025年の凱旋門賞を勝った騎乗を見ても『豪快に追える』が長所。『器用に位置取りを取ったり馬群を縫うような騎乗ではない』という評価は変えなくていいように思える。
今回、カランダガンはどんな走りをするか。
海外馬の場合、常に日本の芝でもフィットして馬が動けるかどうかが焦点だが、今回は『バルザローナが大味な競馬をするかもしれない』という予測も含めて検討材料になる。僕は普段印を打たないが、印で表現するとしたら、評価は、ギリギリ付けても、△。
クロワデュノール。
3歳ダービー馬。ホーム戦で東京芝2400mの舞台なら、ここは力を見せないといけない。ジャパンカップの場合、3歳馬が勝ち切るところまでいくのはかなり大変だが『本当に強い3歳馬』なら好走できる歴史がある。そしてこの馬は世代ナンバー1という立ち位置になる馬。期待できる。〇
サンライズアース。
かなりしぶといが・・・。3000m超えに向いているタイプ。スタミナを生かしたいが、ジャパンカップはスローペースからの究極の末脚比べのようなレースになることが多い。
ジャスティンパレス。
前走の3着には驚いた。ただ、『王道型』の6歳シーズン。昨年でも衰えていると思い、1年間、全レース無印だった。近走は若干の復調を感じる。そこに、鞍上クリスチャンデムーロで無印にするのは恐い。今年は無印に近い、△。
シンエンペラー。
昨年、3歳でジャパンカップを2着。本来なら着順を上げてくるパターン。ただし、その昨年が「出来過ぎ」と思って見ていた。今季はなかなか結果が出ていないが、もともと「これくらいの実力」と思っていたところもある。ここは様子を見てみる。
タスティエーラ。
これは『王道型』の5歳秋。前走時にも指摘した通り、少し衰えを感じている。天皇賞・秋は「早めに抜け出しすぎた」という声も多そうで、今回は控えて末脚を伸ばすレースをしそう。レーンはそういう騎乗のプロ中のプロではあるが。馬に小さな衰えを感じる。その点が、どうか。
ドゥレッツア。
これは菊花賞馬で『晩成型』なので走れてもいいのだが。近走をみると、アスリートとしての時節は、菊花賞から1年で切れてしまっているのかもしれない。
ブレイディヴェーグ。
牡馬相手では、斤量に敏感なタイプと評価してきた。ここも無印としてみたい。
ホウオウビスケッツ。
今の硬い東京の馬場がどうか。だが、先週は内目が伸びて、逃げ切りが見られた。Cコースなだけに、単騎でいければ。距離が2400mあるぶん、少し離して逃げれば好走の可能性が生まれてきそうだ。スムーズに逃げればしぶとい馬。△
マスカレードボール。
前走の天皇賞・秋では『3歳ナンバー2』と評価して、単複で大勝負。最高の結果だった。もしかすると3歳ナンバー1に躍り出たかもしれない強さだにも感じた。ただ、ジャパンカップの場合「3歳ならナンバー1」でやっと通用するほど厳しい舞台。生粋のサウスポーで、順調に成長さえすれば、今から来年の4歳シーズンの大活躍を宣言できる馬だ。問題の今回は「どこまで3歳世代のナンバー1に近い存在になれているのか」が見える1戦となりそう。要注目。▲
<本島修司の競馬分析ワード>
【馬単位】:2008年に本島が発案した概念。一般的な「このレース、どの馬が来るか」ではなく「この馬、どのレースなら来るか」という見方に切り替えること。馬1頭と真摯に向き合うための概念。
【良駒】:その種牡馬の「産駒らしさ」が濃く出ている馬。『信頼性』が見込め、『ポテンシャルの高さ』を測る目安のひとつにもなる。
【エビデンス】:本来は「根拠」という意味の言葉だが、似ているパターンや、似ている状況で「必然の好走が出来た過去の事例がある」という意味で使用している。