レガレイラ。
　ローズS（５着）以来、２回目の購入となる予定。
　スワーヴリチャード産駒の、牝馬。
　良駒だ。

　ローズSの負けで一度見切ったが、その後の走りを見て見直すのは当然として「どんな見直し方をするか」を、しっかり検討した。
　強いことは強い。ただ、誰もが扱いを迷う馬。”近年最高の問題児”と言えるほどだ。

　昨年のエリザベス女王杯は「軽く詰まった」。決してドン詰まりではなかった。パトロールＶＴＲを見ればわかるが、前は開いていた。その中でトロトロっとした伸び脚。

　結果は５着。あれで、みんな迷っている。「あれって、不利がなかったとしても、勝てていたか」と。日本の競馬ファンの目は誤魔化せない。あの競馬は勝ててないと見たい。

　ただし。５着はない。私の見立ては「３着だった競馬」として、処理した。４着だったシンリョクカとは「ハナ差」だ。

　【ハナ差とは、ただの頭の上げ下げであり、そこは「運」だ。】

　３着ホールネスと、４着シンリョクカがクビ差なので、あとはそのぶんの差はあるが、レガレイラは小さな不利と合わせて、道中で「８→８→１０→９」と番手を下げていた。スムーズな競馬でなかったぶんだとカウントする。スムーズだったらホールネスともう１頭までは捕らえていたのではないか。そう見る。そうすると「不利がなければ３着だった」と評価する。

　３歳でエリザベス女王杯を３着というのは、決して弱い成績ではない。名牝、ラヴズオンリーユーと同じだ。だが、なぜかレガレイラにはそれでは物足りな様なイメージが付きまとった。
　　
　２歳で、牡馬Ｇ１ホープフルＳを勝ってしまった。異例だ。３歳では桜花賞とオークスではなく皐月賞と日本ダービーを走らされた。超がつく異例だ。この摩訶不思議ローテが、「普通の負けを普通と思ってもらえない存在」にしていった。

　３歳牝馬の有馬記念制覇は大偉業だ。ただし。ハナ差でどちらが勝ってもかしくない首の上げ下げだった、その相手は「もう６歳で引退間際のシャフリヤール」。中山専用機の可能性もあるが、そうだとして、その中での「微妙な見立て」は、まず「中山Ｇ２圧勝級・中山のＧ１なら上位争い」と見ている。

　ここでも、世の中のイメージは加速している。

　有馬直行なら楽勝、みたいな雰囲気の中でエリザベス女王杯に参戦するから、今回は誰もが迷う存在になっている。しかし「有馬では最有力であって、有馬楽勝とは思わない」という評価をしたい。

　では、ここ、京都の牝馬限定Ｇ１でどうするか。イメージ通り「ものすごい勝ち方」も「ものすごい負け方」もありえそうだが。

　【３歳で実質３着だった馬が、４歳になり、骨折から立ち直り、順調に成長して、牡馬別定Ｇ２を５７キロで圧勝している。】
　ここを重視したい。

　オールカマーを５７キロで牡馬に楽勝できる牝馬は、なかなかいない。中山専用機の可能性は十分にある。ただし、それでもこの成績。牝馬Ｇ１なら上位。そう思う。もちろん、特殊な存在・異色なタイプである状況は続くが、骨折からも立ち直っていることも加味すると、末脚は「出せる」はず。

　エビデンス・過去の似ている事例としては、同じくオールカマーからで、エリザベス女王杯を勝ったジェラルディーナが思い浮かぶ。

　しかしもう１頭。いつも人気、末脚がキレて、瞬発力タイプ、牡馬とも戦えるが不発あり、３歳でエリザベス女王杯を５着、４歳でエリザベス女王杯制覇、その間にグランプリレースを勝っていたという成績の牝馬が、かつて１頭いた。

　２００５年、スイープトウショウだ。
　この時に似ているような気がする。

　鞍上は、戸崎騎手。
　関西圏のG1でイマイチな騎手ではある。とにかく普通の競馬を。馬が骨折から立ち直っていなかった宝塚記念でも、騎乗自体はよかった。あの乗り方でいいと思う。ヘンに”引っ張らないで”もらいたい。中団外目。絶対に前を射程圏に入れて。その乗り方を、強く意識してほしい。
　

　G１だ。
　有力各馬に、ひと言ずつ、見解をつけていこう。

　ヴェルミセル。
　ゴールドシップ産駒ながら京都で好走する馬。京都大賞典での３着は、意外と凄い。僕は普段印を打たないが、印で表現するとしたら、△。

　エリカエクスプレス。
　完璧な逃げを打った秋華賞。実力以上のモノを出し切れて、本当にかなり惜しい競馬だった。今回もマイペースなら恐さがある。逃げなくても競馬はできそうで、ここでの作戦にも注目だ。あとは外回りになってどうかだけ。素質が少しずつ開花してきている。△

　オーロラエックス。
　G1実績がまったくない。ただ、サトノダイヤモンド産駒で京都コースが抜群に得意。充実の４歳馬。健闘してきそう。△

　カナテープ。
　鞍上ダミアン・レーンで、ノーマークにはできなくなった。ただ、成績通り、右回りも２２００ｍも厳しい様に思う。△

　ケリフレッドアスク。
　堅実さがある。気性も良さそうだ。ただ、G1になると、パンチ力が足りないかもしれない。

　ココナッツブラウン。
　夏に絶好調だった１頭。札幌記念では男馬と別定Ｇ２で勝ち負け。これは馬にとって自信になりそう。充実の夏の直後のG1。マークは必要と思う。△

　サフィラ。
　２歳時から「強くない」と、評価してこなかった馬。今回も無印にしてみる。

　シンリョクカ。
　サトノダイヤモンド産駒で大得意の京都。昨年も４着。ただ、５歳になってあれ以上は厳しいかもしれない。

　ステレンボッシュ。
　４歳の桜花賞馬。普通ならこれも主役級だが。「エピファタイマー」が”鳴り響いて”しまっている。打開策が鞍上・ルメール、ということだろうが、どこまで蘇るか。力さえ出れば勝ち切るところまでいける馬だが。”ルメールマジック”待ち。▲

　セキトバイースト。
　京都で圧勝を演じている。４歳馬。前走が不可解だが、一応、ノーマークにはしない。△

　パラディレーヌ。
　ローズS（着外）は、やはり本来の実力ではなかった。そのローズSは出遅れて、リカバー。けっこう大きな出遅れだったが、中団のインに潜り込んで、そこまではまだよかった。しかし、ハイペースで流れて外からビュンビュン伸びる馬がいる中で、直線で思い切り詰まった。
　秋華賞は「イン有利の京都」の内回り。外枠から、仕方がなく決めてかかったような中団からの大外差しを披露。インを通った、エンブロイダリーとエリカエクスプレスより、だいぶ不利な進路取りと走法だったが、末脚をしっかり使えて３着。世の中の見方通り「外回りの方がいい」タイプ。
　岩田望に替わるはプラス。腕を上げている騎手で、そのことは拙書にも記したが「春の桜花賞、オークスで、外国人ジョッキーとワンツー・フィニッシュできたのはこの騎手の道中の華麗さ・スムーズさの賜物」。得意の京都で、それが出せれば。〇

　フェアエールング。
　パワーがある牝馬。Ｇ１ではもうワンパンチ足りないように思うが、どうか。

　ボンドガール。
　関屋記念で単複を買い、前走は軽視した。頑張っている素質馬だが、どうしても勝ち切れないところがある。ただし、秋華賞２着馬で、４歳の秋。マークしておきたい。△

　リンクスティップ。
　気性的な難しさが出てきているように思う。巻き返せるかは微妙だ。ただし、鞍上、クリスチャンデムーロ。そのぶんだけ、念のため、△。

＜本島修司の競馬分析ワード＞

【馬単位】：2008年に本島が発案した概念。一般的な「このレース、どの馬が来るか」ではなく「この馬、どのレースなら来るか」という見方に切り替えること。馬１頭と真摯に向き合うための概念。

【良駒】：その種牡馬の「産駒らしさ」が濃く出ている馬。『信頼性』が見込め、『ポテンシャルの高さ』を測る目安のひとつにもなる。

【エビデンス】：本来は「根拠」という意味の言葉だが、似ているパターンや、似ている状況で「必然の好走が出来た過去の事例がある」という意味で使用している。