アーバンシック。
初めて買う馬。
スワーヴリチャード産駒の、牡馬。
良駒だろう。
菊花賞向きの馬だと思い、待っていた。
菊花賞のポイントは、次のようなものだ。
・西の前哨戦、神戸新聞杯1〜3着馬(距離伸びて良い血統)
・東の前哨戦 セントライト記念の1〜2着馬(距離伸びて良い血統)
タスティエーラの「直行成功(2023年菊花賞・2着)」で、これからは日本ダービーからの直行も増えるかもしれない。だが、3000m戦のマラソンレース。基本的には、前哨戦を使った方が有利で、かつ「どちらの前哨戦が、菊花賞向きの馬が上位に来ていたか」の分析が重要となる。例年、レベルが高いのは神戸新聞杯の方。しかし、今年はセントライト記念の方に目を向けた。
アーバンシックはダービーで大敗したが、成長力を見せていた。また、後方一辺倒だった脚質にも、位置取り矯正を見せた。今なら中団で流れに乗れる。追い込み馬から差し馬にチェンジした印象だ。
父は、スワーヴリチャード。評価が急上昇(種付け価格も急上昇)している種牡馬だ。ちょっと異様に評価が上がってしまっているが、普通に「ハーツクライ系の優秀な種牡馬」としていいと思う。スワーヴリチャード自身は3000m砲ではなかった。王道の2400mを走っていた馬だが、産駒から3000mが合うタイプが出てくるのは自然な流れだろう。
ダービー、11着。これが、着順的に気になる。おそらく、みんな気になる。ただ、高速化した東京の芝2400mでのG1と、京都の3000mのマラソンG1の菊花賞は、関連性は薄れている。
日本ダービーで3着以内であれば「能力の証明」にはなる。近年だと、タスティエーラ(2着)、ソールオリエンス(3着)、アスクビクターモア(1着)などがそうだ。
しかし、G1で戦える「成長」さえ見せていれば、ダービー大敗、秋にトライアルで上昇、菊花賞でも好勝負という流れは作れる。キタサンブラックなどもそうだった。2019年(8番人気・2着)に単複を買ったサトノルークスもそうだった。
エビデンス・過去の似ている事例としては、ジャスティンパレス。日本ダービー大敗(9着)から、神戸新聞杯を圧勝して、菊花賞で(3着)。このパターンに似ているだろうか。
鞍上は、ルメールジョッキー。
出脚が鈍いので、ゲートに気をけてもらいたい。馬群の中で我慢する競馬をしてほしい。距離はハーツクライ系で大丈夫だと思う。道中は動きがあるだろう。動じず、動かず、マイペースで。馬群の中に身を潜めて、直線へ向いてもらいたい。
G1だ。
相手を少し、見渡してみる。
アドマヤテラ。
世の中はすっかりダメな種牡馬という烙印を押しているが「1期生の秋ごろからジワジワ上昇する」としていた「レイデオロ産駒全般」。その筆頭がこの馬かなというイメージ。3000m戦は不安より、一発の魅力がありそう。僕は普段印を打たないが、印で表現するとしたら、△。
アレグロブリランテ。
さすがに近走のこの成績では、3000mのG1では厳しいと思う。
エコロヴァルツ。
しぶとく頑張っている。ただ、G1ではもうワンパンチ欲しい印象。
コスモキュランダ。
セントライト記念は「自分で動いて2着」。勝ちに行く競馬ができていた。菊花賞向きだ。ただし。父、アルイアインに、あまりにも似ている成績。この点だけがどうか。母馬は長い距離での活躍馬。このあたりに活路を見出せるか。父アルアインは距離が長く、菊花賞は厳しかった印象。そのぶんだけ、どうかだ。△
シュヴァルツクーゲル。
夏に上昇。重賞を使わないローテーションがどうかだが、母父モンズンのキズナ産駒。一発の可能性はある。走り方から距離は大丈夫そうだ。△
ショウナンラプンタ。
ゆきやなぎ賞(1着)で単複を買った時に、鮫島騎手が”折り合いビタ止めで押さえつける”ような騎乗をして勝たせてくれた。あれが実に「教育的・騎乗」になっている。3歳の秋、神戸新聞杯では3着。ここでも完璧に折り合った内容は、成長が見えた。鮫島騎手がまた同じような騎乗をやってきそう。G1に何度も出ており、意外と経験値を持っている馬でもある。馬群の中で、折り合いピッタリ、周りに合わせずマイペースからの、無欲の差し競馬をするかもしれない。春から一連の競馬、騎乗、ローテを評価している。〇
ダノンデサイル。
ぶっつけは問題ないと思う。ただ、「エピファネイア産駒は本質的に3000m超えはどうなのか」。3歳秋で、まだ本質が問われる時期ではないし、菊花賞は中距離馬でも上位に来る。だが「本質的にステイヤーの資質がある方を評価する」のが王道だと感じる。日本ダービーの着差を見る限り、このメンバーの中でなら、単純能力は一番だ。△
ピースワンデュック。
実績通り、ステイヤー資質を秘めていそう。柴田善騎手を応援しながら見守りたい。母父ジャングルポケットの血統も生きるかもしれない。すごく好感を持てる1頭。△
ヘデントール。
なかなかの、夏の上がり馬。しかし、こういう成績なら前哨戦の重賞をどこか使うべきだった。鞍上は「関西圏のG1・差し馬の戸崎騎手」。あまり過剰なほどの高い評価はしない。△
メイショウタバル。
いい逃げ馬だ。前走の走りには降参してしまった。今回もあの溜め逃げならば、やはり恐い存在だ。ゴールドシップ産駒。3000mは大丈夫だと思う。あとは、競りかけられた時にどうか。そして暴走しないかどうかだ。△
メリオーレム。
前走はエンジンがかからなかった。3000m超えは合っているはず。あとはG1で戦える実力かどうか「しっかり前哨戦を使ってもらった大事な経験値」を、ここで生かしたい。△
<本島修司の競馬分析ワード>
【馬単位】:2008年に本島が発案した概念。一般的な「このレース、どの馬が来るか」ではなく「この馬、どのレースなら来るか」という見方に切り替えること。馬1頭と真摯に向き合うための概念。
【良駒】:その種牡馬の「産駒らしさ」が濃く出ている馬。『信頼性』が見込め、『ポテンシャルの高さ』を測る目安のひとつにもなる。
【エビデンス】:本来は「根拠」という意味の言葉だが、似ているパターンや、似ている状況で「必然の好走が出来た過去の事例がある」という意味で使用している。