◆「併用調教」の定義とは
「併用調教」。数十年前の調教予想にこのような言葉はなかったと思います。なぜなら、これは私が調教適性を考えていく上でつくった言葉だから。調教適性は追い切り行う場所によって、運動効果が違うという考え方で、坂路なら無酸素運動、トラックなら有酸素運動と私が定義しました。
坂路とトラックが運動効果の対局にあり、それを併用することで両方の効果を得ることができるという考え方が併用調教になります。
ただし、10本追い切りを消化した中で坂路がたった1本しかないのに併用というのは効果としてどうか、と悩みました。よって、10本中2本は坂路もしくはトラックという場合(追切全体の2割)を併用調教という分類にしました。もちろん、この定義も私が決めたものになります。
◆「併用調教」の重要性を知ったレース
併用調教という言葉をつくって、それを決して忘れることのできないものにしてくれたのが、2001年天皇賞・秋。連覇を狙うテイエムオペラオーが単勝2.1倍の人気を集めたレースでしたが、このレースに向けた調教内容はDWとCWでの追い切りが1本ずつ。併用調教ではありませんでした。
単勝20.0倍の4番人気だったアグネスデジタルは週末に栗東坂路で追い切り、最終追い切りはDWの併用調教。東京芝2000mには併用調教が有効だと予想したので、馬券的妙味も考慮して、この馬に◎を打ちました。そして、アグネスデジタルの勝利したことはご存じの通りです。
◆「天皇賞・秋」がどうして併用調教なのか?
2001年天皇賞・秋を予想した時、どうして、併用調教が重要だと考えたか。それは過去の天皇賞・秋の好走馬の調教内容を検証したからです。当時、参考にしたのは1999年の天皇賞・秋。単勝6.8倍で4番人気だったスペシャルウィークが勝ちましたが、1週前追い切りを栗東坂路、週末追い切りと最終追い切りをCWという併用調教でした。
スペシャルウィークは京都大賞典を7着に敗れていましたが、そこから巻き返した要因のひとつが調教適性だったと考えたわけです。これがアグネスデジタルに通じたのは、所属が同じ白井寿昭厩舎だったということもあります。
◆リーディング上位厩舎は「併用調教」
美浦所属なら堀宣行厩舎、木村哲也厩舎、田中博康厩舎。栗東所属なら友道康夫厩舎、矢作芳人厩舎、杉山晴紀厩舎。毎年のようにリーディング争いをする厩舎はみな、併用調教が主流となっています。ここに挙げた厩舎以外でもリーディング20位以内の厩舎はほとんど併用調教といってもよいと思います。
厩舎によって、1週前追い切りがトラックで最終追い切りが坂路の併用だったり、週中はトラックで週末は坂路の併用だったりとパターンは少し違います。厩舎ごとに坂路とトラックの追い切りのリズムを確認してみると「厩舎の好走パターンと違う」といった発見もあると思いますので、そんな視点で調教欄を見ても楽しいのではないでしょうか。
◆東京芝2000m以外で併用の調教適性が高いコースは?
東京芝2000m以外のコースでも、併用調教が調教適性の高いコースはたくさんあります。芝だけでなく、ダートでも併用調教が有利になる舞台がありますが、その代表は東京ダート1600mです。
ダートでは1800mを超える距離で併用調教が有効なコースが多いのですが、東京ダート1600mはワンターン。ワンターンだと坂路調教だけ、無酸素運動のパワーだけでこなせてしまうことが多いのですが、スタート地点が芝で向正面のペースが速くなりやすく、なおかつ最後の直線が長いということでトラック調教の有酸素運動も必要になるというわけです。
併用調教は奥が深く、私自身もまだまだ検証していかなくてはいけないと思っているので、また機会があれば、併用調教について取り上げるつもりです。