(〜コース分析・馬場分析〜)
右回りで1周2880m。長い3つの直線をコーナーで繋いでおり、形状は三角形の“おむすび型”をしています。今回のプリンスオブウェールズSは1990mなので、三角形の左の辺の真ん中がスタート地点となり、コーナーは2つだけ。スタートから三角形の頂点にあたる最初のコーナーの中間までは終始下り坂。高低差10m強を下ります。400mほど続く緩やかなコーナーを抜けて次の直線に入ると、ここは一転して終始上り坂。2つ目の最終コーナーを抜けて最後の直線に入っても急勾配の上り坂となっており、最後のゴール前200mのみが平坦となっています。最後の直線は500mとたっぷりあります。三角形の頂点にあたる最低地点(スウィンリーボトム)と、最高地点のゴールとの高低差は22.25m。中山競馬場の急坂で5.3mですからその4倍強もの高低差を有する非常にタフなコース形態と言えます。
ディアドラを管理する橋田調教師が実際に馬場を歩いた感想からは、『地盤の質は粘土質。馬場自体は硬い。天気が続き乾燥すると相当硬い馬場になる。水分を含むと含まないとで表情が変わる。雨が降ると緩くなる。』とのこと。先週はかなり雨が降りましたが、週末には回復。17日(月曜日)段階で「Good」まで回復しました。ちなみに、イギリスの馬場状態は以下の7段階があります。月曜日は「良」の中では一番含水率が高い状態です。
「良」Hard→Firm→Good to Firm→Good
「稍重」Good to Soft
「重」Soft
「不良」Heavy
ただ、レース前日18日(火曜日)の夕方から雨。当日も降る予報となっており、道悪になる可能性があります。当日の馬場発表には大いに注意しましょう。
(〜出走各馬〜)
1番クリスタルオーシャン
これまでの全成績が7−5−2−0。13戦全てで馬券圏内に絡む安定性を見せています。
まだG1勝ちがありませんが、このアルコット競馬で行われた5走前のキングジョージ6世&クイーンエリザベスS(芝二三九)・3走前の英チャンピオンS(芝一九九)で共に<2>着としており、コース相性の良さをしっかりと見せている強みは大きなものです。また先着を許した馬はポエッツワード・クラックスマンですから、相手の強さを称えるべきです。昨年はここではなくハードウィックS(芝二三九)を使って勝ちましたが、ここ2走の連勝は昨年と同様のローテーション。青写真通りに来ています。『昔は気性的にベイビーだったけど、今はだいぶ大人になった。ここ1年でかなり扱い易くなった。』という陣営のコメントもありますし、このメンバーに入っても通用するでしょう。
4番ヴァルトガイスト
昨年のこのキングジョージ6世&クイーンエリザベスSを硬い馬場を嫌って回避しましたが、5走前の凱旋門賞の前哨戦のフォワ賞(芝二四)では、上がり33秒台前半の凄い瞬発力を見せての差し切りV。問題ないと見て良いでしょう。凱旋門賞は<4>着でしたが、0.3秒差ならば悲観するような敗戦ではありません。しかし、その後のBCターフ(芝二四)・香港ヴァーズ(芝二四)が<5>着とはいえ、内容は不満を覚える平凡なものでした。しかし、4ヶ月半強の休養を経て復帰した前走のガネー賞(芝二一)は5頭立てだったとはいえ、仏ダービーを制したディープインパクト産駒であるスタディオブマンに0.8秒と大きな着差を付けての圧勝。立て直された効果がしっかりと見えました。道悪でも実績十分の晴雨兼用の強みがあります。一九九という距離は短く感じますが、上位の瞬発力に注目する価値は十分あります。
7番マジカル
昨年の凱旋門賞は<10>着とまだ一線級相手に通用しませんでしたが、次走の英チャンピオンズフィリーズ&メアズS(芝二三九)でG1初制覇を飾りました。1馬身差を付けた<2>着のコロネットは、ヨークシャーオークス(芝二三七)・サンクルー大賞(芝二四)で<2>着・キングジョージ&クイーンエリザベスSで<3>着としている実績馬でした。また、このアスコット競馬場で好走したことが今回に繋がります。そして、続くBCターフ(芝二四)では凱旋門賞を連覇した強豪エネイブルに0.1秒差・<2>着と本格化を示しました。そして、5ヶ月弱の休養を挟んで3連勝。3レース共に<2>着馬はフラッグオブオナーですが、相手は愛セントレジャー(芝二八)の勝ち馬です。多少詰まったローテーションが気になりますが、『前走時と同じぐらいの状態にある。』と陣営はコメント。『気性的に安定しない面があったのが、年齢を重ねてだいぶん集中して走れるようになった。』今の勢いを考えればここに入っても怖い存在となります。ただ、ポイントは時計面。BCターフの好走は2.32.7・「稍重」と相当時計を要しています。近3連勝にしても同様。雨の影響が少なく硬い馬場になり、時計を要求されるようならば不安があります。
8番シーオブクラス
昨年の凱旋門賞(芝二四)エネイブルのクビ差まで迫った末脚は記憶に新しいところ。19頭の多頭数の中、スタートで後手を踏み最後方から2頭目という位置取りになりながら直線では縫うように猛然と追い込みました。ここに出走してくる<4>着のヴァルトガイストに0.3秒差を付けています。連勝は4でストップしましたが、負けて強しという印象を強く与えました。強靭な末脚は、タフなアスコット競馬場を味方にすることが出来ます。問題は、それ以来のレースとなってしまったこと。5月にイギリスのミドルトンSを叩いてここというのが当初の目標でしたが、熱発による血液検査の結果が良くないという理由で回避。ここがブッツケとなってしまいました。陣営からはデキに心配はないというコメントが出ていますが、人気の中心となる存在だけにここは割り引いて考えたいところです。あとは、これまで経験のない道悪をこなせるかどうかという課題もあります。なお、海外の場合は道悪を嫌がって出走を取り消すことが許されており、もし同馬が取り消すようなことがあれば馬場レベルはかなり悪いと考えて良いでしょう。
6番ディアドラ
雨の降る中での「重」の秋華賞で初G1制覇を飾っているように、道悪は得意の馬。元々は重い芝巧者でした。その馬が府中牝馬Sでは上がり32.3秒をマークして勝利。東京競馬場の重賞勝ち馬では史上最速の数字を叩き出しました。「良」でも「重」でも問題ない晴雨兼用の強みがあります。ただ、今年に入っての3走が案外な内容。3走前の中山記念は前哨戦の意味合いのレースでしたが、それにしても走らなさ過ぎです。目標だったドバイターフ(芝千八)はアーモンドアイに1.0秒・ヴィブロスに0.8秒と大きな差を付けられての<4>着でした。前走のクイーンエリザベス2世Cも0.6秒差・<6>着と着差こそそこまで大きくないものの持ち味の切れ味は見られませんでした。日本に一旦帰ってくることなく、香港から直接イギリスに飛べるルートは輸送の負担を考えれば良いものですし、15日(土曜日)に一杯に追われた最終調教は良好なものでした。『香港からイギリスへ移動してきてから、色々なアップダウンのあるコースを経験して、筋肉の付き方が変わってきた。以前よりも筋肉が浮き立ち、張りが出てきた感じ。精神的にも香港の時は馬が大人しかったが、フレッシュで活気のある感じ。』とデキに関しては上昇している様子が窺えます。本来の力を発揮することが出来れば。
5番ザビールプリンス
4歳10月に漸く初勝利。5歳時にもリステッド競走を1つ勝ち、G2で<2>着があるだけと目立ちませんでしたが、6歳を迎えた今年に入ったここ2走で連勝。前走のイスパーン賞(芝一八五)はエイシンヒカリが勝ったレースですが、仏ダービー馬のスタディオブマンに0.1秒差を付けて初G1勝利を果たしました。マイル路線に使われていた馬ですが、ここ2戦は千八・一八五と距離が延びて良さが出てきました。それを受けて更に距離が延びるここにチャレンジする経緯での出走です。ただ、今回は相手がかなり強力になりますし、また一度経験しているこのアルコット競馬場のハンデ戦で<11>着と敗れているのが気になります。今の勢いは認めるものの、買っても押さえまででしょう。
3番ハンティングホーン
これまでG3を1勝のみ。実績では見劣りますが、そのハンプトンコートS(芝一九九)は、今回のプリンスオブウェールズSと同舞台での勝利。格は勿論かなり下のレースではありますが、2.03.02・「良」という走破時計も悪くありません。2走前のドバイシーマクラシック(芝二四一)は<4>着とはいえ、<3>着のスワーヴリチャードから1.3秒差も付けられのもの。前走のマンノウォーS(芝二二)は最後に捕まって0.2秒差・<4>着に終わりましたが、大逃げを打ってのもの。ここもハナを切ってくるでしょう。少頭数でバラける展開になった場合に多少注意です。
2番デザートエンカウンター
3走前のカナディアンインターナショナル(芝二四)で6歳にして初G1勝ち。5ヶ月振りとなった今年緒戦のドバイシティオブゴールド(芝二四一)ではオールドペルシアンから0.5秒差・<3>着と善戦しましたが、続くドバイシーマクラシック(芝二四一)ではオールドペルシアンに2.5秒と大敗を喫してしまいました。走らなさ過ぎなので、あれが力ではありませんが、勢いには欠けます。スタートが悪く後方から差す競馬になってしまいますが、このメンバーに入ると決め手不足なのも否定出来ません。
(波乱度D)
(3連単2軸マルチ)
1・4 →7、8、6、5、3
(3連単フォーメーション)
1 →4・7・8 →4、7、8、6、5、3
4・7・8 →1 →4、7、8、6、5、3
※中央全レース予想に関しましては、公式HP【ムネヒロネット】をご参照下さい。