近年は上がりも求められるようになった皐月賞。一時期雨の影響で時計のかかる馬場になったものの、開催後半はその雨の影響を感じさせず先週を見ていても時計は出ている。日曜に雨の予報があるがレースへの影響はそれほどなさそうで、近年の傾向通りの決着となるだろう。このレースで上がり最速を出せる馬というよりは、これまでに好位から速い上がりを出したことのある馬を狙いたい。
本命は12番サートゥルナーリア。3戦とも着差はそこまでないが、それぞれこの馬が力を出したのは抜け出すときのほんの一瞬だけ。加速力もスピードもこの世代は何枚も抜けている。ホープフルS以来のレースとなりレイデオロ(5人気5着)が思い浮かぶ方も少なくないだろうが、もともとここを勝った時から直行は決まっておりトライアルを使えなかったわけではないし、放牧先(いわゆる外厩)でしっかり乗り込まれ、入厩してからも2週前の大阪杯直前追い切りのエアウィンザーを煽る手応えといい抜群の動きを見せている。最大の目標がダービーとはいえ、シャケトラを手がけた角居厩舎なら仕上げに間違いはないだろう。速いペースを経験したことがないとのことだが、そもそもこの不安はこの馬だけに当てはまるものではないし、気が勝っているところがあるのでペースが流れるのはサートゥルナーリアにとってはむしろ歓迎なように思う。枠順もデムーロ騎手騎乗のアドマイヤマーズや、逃げるであろうランスオブプラーナの内に入ってしまったら嫌だなあと思っていたが2頭を見る形の12番枠。これは絶好枠と言ってよいだろう。こうなると展開面の死角を探すしかないわけだが、スローに落ちるならルメール騎手が自ら動く形をとるであろうから問題ないし、複数頭でハイペースを作って道中脚を使わせる展開なったときにはやってみないことにはわからなくもないが、このメンバーからそのような展開はまず考えられない。冗長的になってしまったが、何が言いたいかというと能力が抜けているうえに死角がない。先週のグランアレグリアの勝利も後押しして配当妙味が期待できないこの馬について力説する予想家としてのメリットは全くないのだが、それだけに考えぬいた末の結論だということをわかっていただければ幸いである。この馬を嫌うとすれば距離が延びる日本ダービーだろう。
対抗は7番ヴェロックス。重賞勝ちこそないがここ2戦は内回りの2000m戦(リステッド競走)を連勝。いずれもライバル馬を後ろに置く形ながら上がり最速の脚で勝っていることには大きな評価を与えたい。最終追いは芝コースだが、雨で足下が悪いときにはこの厩舎ではよくあることなので気にする必要はない。前走も前々走も時計のかかる馬場で結果を出しているので多少の道悪も問題なく、サートゥルナーリアに外から併される形で一緒に上がっていく展開だけが負け筋(負け=4着以下)で、馬場・展開ともに死角は少ない。
▲に4番ダノンキングリー。前々走は中山マイルで不利な大外枠ながら中団から上がり最速の脚で3馬身半差の快勝、前走は超がつくスローペースながら上がり2位の馬を0秒6も上回る32秒9の切れ味を見せてアドマイヤマーズ以下を相手にしなかった。それぞれ中身の非常に濃いレースであることもそうだが、それを全く異なる2つのペースで成し遂げている点で価値が高い。この馬も最終追いがポリトラックコースということで、いつもなら気にかけるところだが、ここ2戦も同じようにポリ追いであの結果なので今回だけ取り上げて気にする必要はない。今回更なる距離延長となるが、スローペースとはいえあのパフォーマンスができるなら2000mは十分許容範囲とみている。ジョッキーは前走で距離への不安はなくなったと言っていたが、好位で進めるよりは脚を溜める競馬が理想。内枠は一見良いようにみえておそらくごちゃつくので、あとはジョッキーがいかに捌いてこれるかだろう。脚質的な分だけ3番手評価だが、スムーズならこちらが世代No.2。
この3頭がこのメンバーからは抜け出した存在とみている。ただ4番手以下は例年以上に混戦で、正直自分の好きな馬から買った方が後悔がなくていいとまで思うが、先ほども述べた傾向を踏まえて何頭かピックアップしたい。
4番手☆は6番クラージュゲリエ。前々走の京都2歳Sでの上がり33秒8は内回りコースであることを考えるとなかなか出せるものではなく、新馬戦のラップといい小回りへの適性は相当高い。中山コースは初めてだが半兄プロフェットは皐月賞と同条件の京成杯を制しており血統的な後押しもある。2番手のインをとれる好枠を引いたし、条件好転のここならダノンキングリー含めて勝ち負けできるはず。
5番手△1は13番ブレイキングドーン。前々走、前走と馬体が絞れればとの思いとは裏腹に馬体増で、近2走はこの馬の本来の力ではない。調教後馬体重こそまた前走比で増えているが、この中間はここまでで一番負荷がかかった調教を積めており、緩いというよりは馬体のパワーアップとみたい。個人的にはダービーで大化けすると思っているのだが、血統的には皐月賞向き。3戦連続の同じ条件で福永騎手とずっとコンビを組んでおりここへの勝負気配も感じる。傾向からはやや外れるがここ2走のレースぶりからロングスパートの戦法をとってくると思われるのでそれならば上がり勝負でもカバーできる。賞金的にここで5着以内に入って優先出走権を手に入れないと日本ダービーでの勝ち負けは難しくなるので本音は掲示板確保で十分なのだが、素質では足りていい。
最後6番手△2に11番ラストドラフト。パワータイプではないこの馬にとって前走の馬場は堪えたか。急な乗り替わりとなったのも良くはなかっただろう。そこを度外視していいのであれば、好位から速い上がりを使える点で評価できるし、父ノヴェリストだがこの馬の場合は母のマルセリーナの血が強く出ている印象で瞬発力が相当高いので、近年のレース傾向にも合致する。京成杯のレースレベルに疑問を持たないこともないが、今年のステップレースは共同通信杯と若葉Sが標準レベルをやや上回る程度で全体的にどれもレベルは高くないので、2、3着であれば十分期待していい。
買い方としては本命のサートゥルナーリアを1着に固定した3連単で勝負。わかりやすいように2パターンだけ挙げているだけで、雨の影響がなさそうであればヴェロックスやダノンキングリーが絡む組み合わせはもう少し厚く押さえたい。雨の降り始めが当日の中山9R(直前の芝のレース)の発走以後であればレースにほとんど影響はないと思われる。この買い方にかかわらずサートゥルナーリアを1着とする馬券を買われる方は、購入の際に3連単であれば3連複と馬単であれば馬連のオッズと見比べることをおすすめしておく。誤差の範囲であれば無理に頭を固定する必要はない。以下、印をつけなかった馬の紹介をしたい。
アドマイヤマーズ
一部でサートゥルナーリアがスローの上がり勝負しか経験していないと揶揄されているが、そういう意味ではこの馬自身もそこまで苦しいペースを経験したことがなく、揉まれた経験もほとんどない。朝日杯のスタート直後に外からかぶされて、かなりムキになっていたところを見ると、今回は楽な競馬にはならないだろう。この枠だとある程度出さざるえず、それでいて引っかからずにレースを進められるかは疑問の残るところである。
サトノルークス
前走は機動力の差でアドマイヤジャスタを上回ったがそれ以上の評価がなかなか難しく、3連勝中もここで買いたいと思わせる材料に乏しい。
ファンタジスト
前走は初の1800mを難なくこなして上がり最速の2着。やはりただの短距離馬ではないことを見せつけた。折り合いに全く苦労しないので前走みたいに差す競馬に徹すれば2000mでもこなせないことはないと思うが、今回は好位からでも速い上がりを繰り出せるタイプが揃ったので出番は恐らくないか。
ランスオブプラーナ
メンバー的に恐らくこの馬が逃げるかと思われるが、ヴェロックスやサートゥルナーリアがそれなりにプレッシャーをかけてくると思うので楽逃げ展開は考えづらく、平均ペースくらいで逃げるしかないだろう。そうなると地力が足りるのかという話になるが、毎日杯の勝ちタイムと春のクラシックは信用できるレベルの相関関係があり(アルアイン1分46秒5、キズナ1分46秒2)、今年のような1分47秒台での決着だと苦しいと言わざるを得ない。
ニシノデイジー
2走前は前が壁になるシーンがあったり、前走は馬場の悪いところを走らされたりと内枠が災いしたような結果にはなっているが、持っている能力からすると内でロスのない競馬をしてなんとか足りるかといったメンバー。枠順の並びからしてインに入れるのは難しそうで、今回好走した時には評価を大きく改めないといけない。
メイショウテンゲン
前走で道悪巧者のイメージがついてしまっているが、前々走の走りを見ていると果たしてそうなのか思わなくもない。結局は最後まで集中して走れるかどうかなのではないかと思っている。そういう意味では良馬場だからと言って評価を下げる必要はないのだが、この血統は兄弟そろってディープ産駒にしては切れる脚がないので時計がかかった方が良いのは確かで、今回要求される上がりを繰り出すのは難しいように思う。成長すれば大きいところも目指せる素質は感じる馬なので気長に成長を待ちたい。
シュヴァルツリーゼ
共同通信杯では対抗評価をつけようと思っていたが回避。前走も重い印を打ちたかったが、中間の動きに物足りなさが残ったので無印評価。その前走では、気になった方も多いとは思うが、力が外に逃げるようなとても綺麗とは言えないフォームながら2着。完成すればサートゥルナーリアを凌ぐのではと思わなくもないくらい高い素質を秘めている馬である。素質とオッズだけを比較するなら「買い」だが、前走は相当内が悪かったのであのような競馬でも届いたが、中山向きではないのは確か。東京コースまで待ちたい。
ダディーズマインド
ランスオブプラーナのところでも述べたがこのレースが逃げ馬に優しくなるとは思わない。前走もあのペースで上がり35秒0ならここでは物足りない。
クリノガウディー
器用さとレースセンスの高さが売りの当馬。外を回る形になった東スポ杯では行きたがる面を見せており、この枠で距離延長は買いづらい。
タガノディアマンテ
ここ2走は控える形で結果を出しているが、前走のメンバーでも上がり最速が出せていないのは不満。先行馬が揃ったのはこの馬には朗報だが、展開待ちになる分評価は高くない。
アドマイヤジャスタ
2走前にサートゥルナーリアの2着があるが、あれはルメール騎手の腕によるところが大きかった。速い脚がないのでそこをどうカバーするかといったところだろう。
ナイママ
速い上がりに対応できていない。相当馬場が悪化しないことには難しい。