無傷の3連勝で、無敗のまま皐月賞を制した15ジャスティンミラノ。好位追走から力強く差し切った皐月賞をみた瞬間、「ダービーもこの馬で間違いなし!」と思ったのを、よく覚えている。しかし面白いもので、時間が経過するにつれて、その確信が少しずつ薄れてきている。筆者と同じような人が多いのか、前日17時段階での単勝オッズは2.4倍で支持率は32.4%と、意外なほど低い水準にとどまった。
今週から東京芝はCコース替わりだが、「イメージ以上に差せる」というのが土曜日の結果をみての感想。近年のダービーは一昔前のように「内枠圧倒的有利」といったバイアスにはならないが、ペース次第で前も残るし差しも決まるという、かなりフラットな状況にあると考えていい。となれば問題はペースなのだが、こちらについては下手すると超スローまでありそう。皐月賞とはまったく違う流れとなる可能性が高い。
昨年のダービーもけっこう遅かったが、今年の組み合わせだと1000m通過が61秒台という、コントレイルが制した2020年に近いペースとなる可能性もあるはず。どれくらい先行指向が弱いかといえば、「15ジャスティンミラノが好スタートを決めると先頭に立ってしまう可能性がある」ほどに弱い。16メイショウタバルが取り消した影響は甚大で、これまで逃げていなかった馬が押し出されるケースも大いに考えられる。
超スローでも逃げ切るのは難しいのが東京芝2400mで、それを熟知しているジョッキーたちは、誰もが逃げたくはないはず。枠番的には01サンライズアースが思いきって逃げるケースもありそうだが、ここが出してこなかった場合は、本当にどの馬が逃げるのか予測できない。こういうときに思い切れるのは、11シュガークンに騎乗する武豊ジョッキー、05ダノンデサイル騎乗の横山典ジョッキーあたりだが……。
いずれにせよ速い流れは望み薄で、展開的には前有利。さすがに逃げ切りは難しいと思われるので、その直後に位置する「好位勢」にもっとも展開が向くと思われる。この位置を確保して流れに乗れれば、ふたケタ人気の大穴でも馬券絡みが可能なのではないか──というのが、現時点での見立て。具体的にいえば、前日14番人気で単オッズ100倍以上である10サンライズジパングあたりにも、台頭の余地があるとみている。
そして、こういった要素が大きなマイナスとなるのが、内枠に入った02レガレイラである。スタートが危なっかしい本馬にとって、内枠は大幅割引。しかもペースが流れないとなると、出遅れからのリカバーがなおさら難しい。土曜日にも相変わるの強さをみせたC.ルメール騎手だが、すべての馬で勝てるわけではない。ここはじつは「一円もいらない」が正解なはずだ。
そして、あの瞬発力の高さが東京替わりで発揮できるかどうかが微妙である、12シックスペンスも疑わしい。前日3番人気ながら、信頼度はけっして高くはないだろう。確かに前走のスプリングSは文句なしの強さだったが、東京向きの長い脚というよりも、中山向きの「一瞬の脚」という印象を受けた。それに、ここで本当に勝負になるのであれば、C.ルメール騎手はこちらを選んでいるのではなかろうか。
それとは逆に、枠番も展開もいいと感じるのが13シンエンペラー。皐月賞は5着に終わったが、手応えのわりに伸びなかったのは、中山の急坂が要因だったのでないかと感じている。であれば東京替わりでの変身が期待できそうで、距離延長はまったく問題なし。外枠からポジションを取りにいって「坂井瑠ジョッキーらしい競馬」をした場合、大きな変わり身があって不思議なし。矢作師が、今度は絶好調だと断言したのも心強い。
また、この展開ならばやはり15ジャスティンミラノも信頼度は高いはず。皐月賞があまりに強かったので「本質的にはマイルの馬」という可能性もあるが、世代限定戦のダービーでスタミナを削られない展開ならば、こなせるはずだ。鞍上の戸崎ジョッキーを信じ切れない側面はあるが、それで人気がここまで落ちるならば割りは合う。鞍上がC.ルメール騎手やJ.モレイラ騎手だったら、単勝オッズは1.5倍前後だったことだろう。
皐月賞のゴール前、15ジャスティンミラノを差し切りそうな勢いだった06コスモキュランダも、上位評価の一角。「東京替わりでどうか」「スローペースでどうか」といった点についてはなんとも言えないのだが、だからといってここまで低評価(前日単オッズ12.6倍)になるのはおかしい。スタート次第では位置を取りに行く競馬もできるはずで、故・岡田繁幸総帥の“夢”がここでついに叶っても不思議なしだ。
というわけで、本命◎は15ジャスティンミラノで、対抗○が13シンエンペラー。単穴▲が06コスモキュランダと、ここまでが上位評価組。以下は△09ダノンエアズロック、☆05ダノンデサイル、注08アーバンシック、注10サンライズジパング、注14ゴンバデカーブースという序列である。簡潔にいえば「皐月賞の上位馬が素直に強い」というのが、今年のダービー総評。あとは、それをどう買うか次第だろう。
推奨買い目は、◎○▲の組み合わせから流す3連単フォーメーション72点が主体。そこに「◎○▲−人気薄の3頭」を経由する3連複フォーメーション29点を付け加えることで、爆発力アップを図っている。堅めのフォーカスも含まれてはいるが、組み合わせ次第ではかなりハネるという、けっこう振れ幅の大きな買い目。この馬券を握りしめながら、ハイレベル世代にふさわしい、最高にアツいダービーを楽しませてもらいたいものだ。